とある日。やっとひと段落してコーヒー休憩をしているとフラリとご来店の初めてのお客様が。スラリと清潔感のあるイメージのその女性は同性からも見てもとても美しい方でした。
店内をぐるりと見て「革をやっているんですか」というところから少しだけお話をしました。気にいって買った革を仕立ててくれるところがなくて…。そう言われ、とりあえず現物を見せてくださいね〜といってその時は終わりました。
少しして女性がその革を持ってやってきました。
印伝風の薄めの豚革一枚はモノクロで一見地味な柄物。
「すべてお任せします。いつまででもいいです」そう言って帰られました。
それは困った。長年の付きあいのある友達ならまだしも私は彼女のことは何も知らない。何をしている人なのかどういうものが好みなのかも。
付き合っている人にプレゼントを選ぶのだって苦労するものじゃないですか…。
想像だけでご提案したものに快く楽しみにしてますと言われてしまって余計な事は考えずその順番が来るのを待つことにしました。
革と一緒に置いていかれたのはプルトップをニットで編んだバッグの持ち手。ちょっと個性的なこの持ち手を生かすも殺すも私次第。
余計に悩ましい…。悩ましければ悩ましいほどにワクワクする性分発揮です。
で、完成したのはこちらのバッグ。
あづま袋です。古くから風呂敷や手ぬぐいを袋物として使用していたこの形。前から一度やってみたかったのです。冬服でも余裕で肩にかけられる大きさだと仕立て前はかなりのサイズとなりました。
プルトップの持ち手は斜めにかがりアクセントに。
和テイストでモノクロな印象のバッグは、シュッとした美人だからこそカッコよく決まるのだと妄想会議を重ねた結果のこの仕上がりに自己満足で終わらないように納品時はドキドキでしたが、彼女の笑顔で喜んでもらえてよかったなぁと久しぶりに作る楽しみを実感しました。
ジャパニーズビューティーなバッグ。
楽しませていただきありがとうございました。