そこに表れる端革の言い分

私にとっての端革は単なる端っこの使えない革ではなく、皮が革になる前の生きていた時の原型としての自然なままの貴重なフォルムであり、このガタガタは美なのです。このラインを見つめるほどに色気さえも感じてしまいます。

物を入れて移動するための道具としては充分に丈夫でシンプルな形ですが、端革のさりげない表現力はまさに唯一でそこにしかありません。

タンニン鞣しの牛オイルレザーはたっぷりと太陽を浴びて日焼けをしたり、手の体温や季節の変化に合わせて吸湿を繰り返してゆっくりと経年変化を楽しんでいくのでしょうか。

大きすぎるトートバッグは総革使いだと重量も気になりますが薄手の革にすることで軽減されています。

こちらは革好きの方からのオーダーでした。革に対するこだわりというものはお客様からお聞きする度に新鮮で日々学ばせて頂く貴重なものです。

お客様が言われていた「ええもんこさえてや」その一言には革への愛情を感じずにはいられませんでした。裏地ナシ、最小限のコバ磨き、下地処理も抑えめで価格と比例するような仕立てですが「simple is best」というテーマにあった仕上がりになったかと思います。シンプルな作りの反面、端革の使い方にはかなりこだわりました。

 

その度に自分はちゃんと革と向き合えているだろうか、手にした革を活かしてあげられているだろうかとか そんなことを考えながら今日も革との対話を楽しんでみたり(^^

一枚の半裁の革と対話をしていると端革が言うのです…。「っね。たまらないでしょ」って。

端革様の言い分も聞いてあげながら革を選ぶ楽しさったらたまりませんよ。

(端革の事を端革さんから端革様に呼び方も変わり格上げされました(笑))

 

最近は同時に同じもののオーダーというのも珍しくなくなってきました。なんでしょうか。引き寄せられるものなのでしょうか。

既製品にはない味わいあるものを。そんなこだわりのオーダーが続いています。