6月某日。朝は肌寒かったのに午後の日差しがどんどん湿度をあげて蒸し暑さが増す。
こんな日は涼を求めてカフェには色んな人が集まってくる。
私は次の打合せまで時間があるので近くのカフェに入った。
そこへ細身で長身、白いワイシャツにデニム姿の男性がやってきた。
カジュアルな青いトートバッグの中からノートパソコンを取り出して手帳に書き込みながら仕事の資料に目をやっている。時々手にするアイスコーヒーのグラスの水滴が革小物に飛び散るのも気にならないほど集中しているようだ。
その隣に座っているのは眼鏡をした白髪交じりの男性。文庫本を片手にゆっくりとコーヒーカップを口へと運んでいる。年季の入ったブックカバーが気になる。どこにでもある静かなカフェの風景。
すると大きな声で電話をしながら入ってきた人に目がいった。
割と大きめのバックパックに両手に荷物の大柄の男性。顔は汗だらけで見ているだけで暑そう。
「ふーーっ」と大きなため息をつきながら椅子に腰をおろした。そして大きなバックバックからごそごそと荷物を探し始めた。中から手のひらサイズの革製のメモ帳を取り出して何やらぼそぼそとひとりごとを呟いている。
それぞれの時間が流れるカフェの一コマ。使うほどに味わい深くその人らしさを物語る革小物たち。
しばらくして…。
カフェを出てアスファルトの照り返しを避けるように地下鉄に吸い込まれていく青いトートバッグの男性。
ヌメ革の紙袋のような革袋を持って席を立った男性は待ち合わせの女性と店を後にした。
さっきの大柄の男性は慌てるようにしてカフェの外のタクシーに飛び乗っていった。背中に背負った革製のバックパックが印象的だった。
三人三様。十人十色。他のものに属することなかれといった革小物を取り巻くカフェでの一コマ…。なーんて勝手極まりない妄想ストーリーでした。