再会と再生のファーバッグ

キンモクセイが薫るのって短いんだなぁ〜なんて事を思いながら、金曜日の午後、世田谷線の三軒茶屋の改札でお客様を待っていました。今回オーダーのご相談でお電話を頂いたのですが、数年前のイベント先でパスケースをセミオーダーされたのがきっかけでした。パスケースの事は覚えていてもお顔がはっきりしないのでした。

私に声をかけ現れたご婦人と移動して打ち合わせを。2度目のはずですが、ご依頼の内容に私は少し緊張をしていました。

コートのライナーが傷んできたので処分しようかと迷っている時に私の事を思い出してくれたそうです。ご希望は普段使いできるショルダーバッグにリメイクとのこと。

経年劣化のため羊毛の裏地の革は手でも裂けるほど弱ってきていたので、決して乗り気にはなれなかったのです。

image

「一応お見積もりを出してみますが難しいかもしれません…」珍しく弱気な気分で素材を持ち帰り、布に強いスタッフに泣きつき、見積もりを作成して慎重にお客様にご説明。リメイクや持ち込みのものって当然ですが失敗が効かないじゃないですか。慣れている素材ならともかく正直ファーの仕立ては去年で懲りているし…。(毛足は長いし、毛は飛び散るし、ファー苦手意識継続中…)

毎回が挑戦です。深呼吸して腕まくりの意気込みです。解体作業後、生地の劣化を補強するために接着芯を貼り、丈夫そうな部分を厳選して裁断。そこからはいつもの如く。

納品時には思っていたとおりに仕上がり大満足ですというお客様の笑顔を見てやっと数年前のイベントで初めてお会いしたときのことを思い出したのです。この懐かしい笑顔を。

image最後に「安くて良いものが簡単に手に入るのに、どうしてお金をかけてまで作ろうと思ったのですか?」と聞いてみました。

「このコートは大好きな姉から数十年前に頂いたという大切なもの。捨ててしまう前に身近な物として使いたかったの」

最後に笑顔で「とても嬉しい自分へのクリスマスプレゼントになりました」

偶然にも納品日は12/24だったのです。メリークリスマス。